怖っ

久しぶりに怖くなった。ジャンルは全然ホラーとかじゃないんだけどさ。
精神科医と患者。医者は自由連想法を試してみるがプロ野球の選手である患者は何を言っても野球のことしか連想しない。大蔵省は一塁線ギリギリのセーフティスクイズ。ウーロン茶がレフトポールを巻くホームラン。大きい乳房はピンチランナー、小さい乳房は残り二十八試合で八ゲーム差の三位。苛立った医者は、じゃあヒットは?っと聞くと、逆に聞き返される。どんなヒットですか?どんなヒットでも構いませんよ、と答えると、先生、ただのヒットなんてないんですよと患者は語り始める。何回か、走者の状況は、守備の態勢は、何点差か、そしてどこにどのような当たりを打ったか。どのヒットであるのか。具体的に、ヒットの個別性を語る。3Pくらい。
これ読んで本当怖くなった。自分は野球部だったくせに、あんまり興味がなかったせいか、ヒットはただのヒットだって思ってたけど、この男みたいに考えたなら、同じ「ヒット」なんてものは一つとしてないんだから、「ヒット」なんて言葉で処理できずに、全ての具体的なヒットを一つ一つデータベースに蓄積しなければならない。そう考えた場合、他の全ての言葉についても、そう言えるんじゃないかなっと。目が眩む眩む。足場が崩れる崩れる。怖い怖い。考えるのをやめた。