設定厨

そう呼ばれる人がいる。物語の設定が大好きな人たちのことで、既存の物語の設定をにやにやと想像して楽しむだけではなく、自ら設定を創ったりもする。商業作品の場合は膨大な設定を見ると設定厨なのかプロ根性なのか判断し難いこともあるが、アマチュアの作品でも、誰が頼んだわけでもないのにやたらと細かく膨大な設定を披露したがる人がいるが、あれなどは十中八九設定厨だろう。
この前。そんな設定厨の人を見掛けた、というか配信で見た。驚くことに、一年前にボツになった物語の話題になると、そういえば設定では古代のある国が滅んだってことになってるんだけど、何で滅んだんだろう、と言って突然考え始め、誰かわかる人いる?っと視聴者に問いかけ始めた。自分で創った物語の設定であるにもかかわらず。それに自分はとても衝撃を受けた。設定なんか適当に、話に都合が良いように創るもんだと先入観があったのだけど、その人はその世界を、まるで現実の世界のように実在するものとして、考え本当に疑問に思っていた。なぜ、自分が創った物語にある古代の国は滅んだのかと。一年前にボツになった物語の設定であるにもかかわらず。物語にはまるで関係のない部分であるにもかかわらず。
それでようやく設定厨に抱いていた疑問が氷解した。なんであんなに設定を創れるのか。設定なんて面倒なものをどうしてあんなに膨大に詳細に創ることができるのか。まるで理解できなかったけれど、ただ単純に好きなんだなと。配信でそのまま小一時間ほど視聴者のレスと自分の考えで設定を楽しそうに煮詰めていた彼のように。
天地創造の時、神が言葉によって世界を創ったけど、言葉を発する前の世界ってのは何もない虚無だったのかな?それとも世界を構成する材料があったのかな?ていうか神の言葉ってのはどうやって発せられたのかな?ってなことを延々と書いてる神学者がいたけど、そのあり方も設定厨的と言える。言葉発したところで世界なんてできないだろう常考、などとは考えず、聖書のテキストを足場にしてその他のことを考える。「高度な文明を持っていたが古代に争いがあって滅んだ国」という設定をもとに、なぜその国は滅んだのかと考えた、彼のように。
まあ、そんな感じでこんな感じ。いやー、世の中いろんな人がいるね、しかし。商業作品の設定も、読むのだりー、社会の年表じゃねーんだからよー、っと飛ばし読みするような自分には、辿り着けない境地だなーっと。なんだろうなー。習慣なのか、嗜好なのか、基本的に想像力が欠如しているせいなのか。