不便と不幸

「君は手が一本しかなくて可哀想だね。」
「そうかしら。」
「そうとも。」
「そういえばこの前火星人のダニエルがあなたのことを話していたわ。」
「何て言ってたんだい?」
「僕には手足が八本あるけど、あなたには四本の手足しかないから可哀想だって。」
「確かにあれば便利だと思うけど生まれたときから四本だから別に不幸とは思わないな。」
「そうかしら。」
「そうとも。」
「何か言うことはあるかしら。」
「ごめんね。」
「よろしい。」

この前この男みたいな考えの質問を考えたとき、どうやって乗り越えられたんですか云々、答える立場としてはどんなもんかなって、手がない立場を想像したら、いやまあ嘆くことはあるだろうけど、嘆いてばかりもいられないし、嘆いたところで生えるわけでもないんだから、どうして私が手にないのかって嘆くよりも、現に一本しかないその手でどうするか考えるよなーって思って、じゃあ最初の質問にどう答えるだろうって考えてみたら、上みたいな話になった。タコっぽい火星人はベタなイメージだけど、あれってタコみたいに八本でいいのかな。足が二本で、腕が六本。いや、まあ、古典的なイメージだとむしろ逆で二本の腕で光線銃みたいなの持ってたりするけども。