たとえば

体を椅子みたいなのに拘束されて芝生の生えたグラウンドに放置される。屈強な男はこれからすることを告げてグッドラックと向こうへ歩いていく。聞かされた内容からじたばたと拘束を逃れようと暴れるが当然のように逃れられず、少し疲れて休んでいると向こうから、黒い点が近づいてくる。綺麗な弧を描いて近づいてくる点は段々と大きくなり風切り音が聞こえた後にドスンと鈍い音で地面を抉り芝生を捲る。屈強な男が告げた通りにハンマー投げの鉄球が飛んでくる。逃げようと思ってさっき以上に暴れるが拘束は外れない。そうしてる間にもあの鉄の塊が、目測できるくらいにゆっくりと、しかし途中から加速度を増してぐんぐんと、近づいてはドスンと落ちる。落ちるなんて生やさしいもんじゃなく、地面を痛めつけるのを喜ぶかのように、加速した鉄球の破壊力の全てを以て地を抉る。そうしてる内に足に当たる。ボキッとか、ぐしゃりなんて、音はしない。まず圧が。力任せに無理矢理足を引きちぎられるような圧が。次に熱が。面倒になってきたから略。ま、そうしてる内に、何発か当たったり当たらなかったりしてる内に、だんだん鉄球の軌道がわかってきた頃に、ふと鉄球を見上げると顔面直撃のコースの予感。千切れた両手に片足で必死になって逃げようとするがやっぱり逃げられない。でも鉄球はずんずんずんずん近づいてくる。死にそうだから脳内麻薬でまくりで見える映像はスローモーション。気持ちはやばいくらいに前のめりで、霊体って表現を使えるならば、霊体は体から前に必死に出ようと上半身は斜め30度くらいに前のめってんだけど、体は拘束されて一歩も動かない。でも鉄球は無慈悲に近づき目の前まで来て失禁。数瞬後。ぐっちゃりべとべと命あぼーん
って、なげーけど、気分はそんな感じ。動け、動いてよ!って感じにも近い。ていうか、その一言で良かったな。でもまあ、あれだよね。ハンマー投げってなんかよくね。銃とか見えないくらいに早いし、密室で水とかじゃちょっと遅い。見えて考えるくらいの時間があるくらいには遅いけど、当たったら原始的な力で致命傷を与えるハンマーって、ちびりそうなシチュエーションとしては、結構ベターじゃないかなっと。いつどこでそんなシチュエーションがあるのか甚だ疑問だけどさ。