今日の11時くらいか

自分は突然蚊の救世主にならんと思い立った。ああ、世界中の蚊の叫び声が聞こえる。助けて。へるぷ。ぶんぶんぶん。あれは羽音じゃない。蚊の叫び声だったんだ。さて、思い立ったはいいが、如何にして救ってみたものか。蚊の代表者として人類と対話に望もうか。蚊権を守れ。生きとし生ける蚊を尊重せよ。ああ、でもそんなまどろっこしいことをしている間にも、世界中の蚊はパンパンパンと叩かれていく。いや、アプローチが悪いんじゃないか。蚊を守るよりも蚊を増やした方がいいんじゃないか。1億匹殺されたとしても、それが全体の10%なら大打撃でも、0.001%なら大したことないんじゃなかろうか。そこでふと気付く。そもそも平和って概念が不自然なんじゃないかなと。弱い生き物は権利を主張し平和を説かずに数で対抗する。数こそ全て。生存戦争は数だよ兄貴。なるほどなるほど。そうであるならば、やはり自分が成すべきことは、蚊を培養し解き放つことじゃなかろうか。ぐひひひひ。誰も気付かぬ静かなテロだ。いや戦争だ。人類と蚊との戦争だ。なんてことを真剣に考えていたにもかかわらず、耳の周りをぶんぶんぶんと蚊が五月蠅いので叩き潰した。うるせえ。今蚊の未来のこと考えてるんだよ。しかし刺された後だったらしく、首が痒み始めたので、やめた。予は気分を害した。蚊のことなんて知ったことか。蚊よ悔やむがいい。愚かなる一匹の蚊のせいで蚊類の未来は今途絶えた。衰退するがいい。刺された所にバッテンの跡をつけて立ち去った。まだちょっと痒かった。