場所は学校の校庭。どこにでもあるような朝礼台。その朝礼台に座ってた自分は友人が投げたブーメランをキャッチする。キャッチしたブーメランを投げる。風に向かって45度。回転をつけて投げたブーメランは右に行き、左に行き、大きく回り、風に乗る。くるくる回りながら上昇する。
それを見ていた自分の朝礼台も上昇する。浮上ではなく上昇。朝礼台についてる4本の脚、簡単な階段。それがそのまま伸びて上昇。気はブーメランに向いてるから気にも留めずに大きく回るブーメランの方ばかり見ている。やがて勢いを失うブーメラン。失いながらもくるくると回るブーメランを朝礼台がするすると上昇してナイスキャッチ。高さは6mくらい。下からは友人達がおー!すげー!などと感嘆の声。
得意になった自分はまたブーメランを投げる。風に向かって45度。先ほどと違うのは回転と強さ。手首のスナップを利かせて、力強く、大きく投げる。すっぽ抜けたかと思うほど右斜めに真っ直ぐ飛んだブーメランはやがて左に旋回しまたもや大きな円を描く。下からの風が吹いているのか落ちることなくむしろ上昇する。眺める自分。するすると上昇する朝礼台。高さは校舎に迫っていたが気にも留めずに眺める自分。むしろ見晴らしの良さに、大きく回るブーメランに気分良くしていた。


しかし、ようやく危機感を抱く。さっき投げたブーメランが勢いを失い描く円が小さくなり自分の近くに来る。下からの風に乗ってなのか、4枚の羽根がまるで蝶にでもなったように、ふわりふわりと上昇する。その上昇するブーメランを上昇する朝礼台のスピードが追い越した時、あれ?っと初めて思い至る。そこからは加速するように、ぐんぐんぐぐんと朝礼台は伸びていく。伸びるからにはいずれ縮むだろう、なんて考えというよりは、ただ単に先送り戦略として、伸びていく朝礼台に座る自分。すでに高さは300mくらい。ガキの頃、正月に揚げた凧が高く上がりすぎ、上空の強い風のせいか引きが強くなりすぎて、糸を巻けなくなってどうしようかという高さに近かった。降りるには高すぎる。
そうしてそのまま先送りをしていたものの、このままじゃいけないとようやく気付く。気付かないようにしていたのだが、朝礼台があまりの高さにしなったことで現実に目を向けさせられる。落ちないようにしがみつきながら、慎重に慎重に朝礼台の中心へと移動して、しならないようにして対策を練る。対策を練ると恐ろしいことに気付く。高さはすでに4桁m。想像の埒外。もし仮にこのまま上昇するスピードが上がっていくと、降りようとしたところで、自分が階段を下りるスピードより、階段が伸びるスピードの方が早くなり、降りられなくなってしまうんじゃないかと。それはもう確信。尋常じゃない速度で伸びる朝礼台に乗っている者の確信。下を見ると目が眩む。眩む以前にぐわんぐわんしなる。落ちないようにしがみつくのに精一杯。だが降りても降りても上昇するという最悪を避けるためにはこれしかない。意を決して階段を下り始める。
下り始めたはいいものの朝礼台は未だに上昇を続けてる。ということは階段も伸び続けている。故に下りる速度は非常に遅い。何千何万何十万段。考えるだけで嫌になるのに、それがまだまだ増え続ける。風は凄いし、下の景色は衛星写真みたいになっている。これだけの高さになると階段だけでもぐわんぐわんしなり、前に後ろに左に右に、ぐわんぐわんというより、たわんたわんとしなりまくる。たわんたわんと言ってもやはり鉄なので、大きく何度もしなるとはいえ、戻る速度はやはり鉄。大きく前にしなったと思うとしばらくしてから大きく後ろへとぐわんとしなる。振り落とされないように階段を握るというよりしがみつく。あまりの心細さに自分は歌を口ずさむ。童歌のようなものを。かんこんかん。かんこんかん。伸びてくよりも早よ下りろ。伸びてくよりも早よ下りろ。そんな感じの歌を口ずさむのだが、いかんせん、そんな歌はありゃしない。ありゃしないので作りながらということになるのだけど、そうぽんぽんと浮かぶものでもないので、自然と繰り返しが多くなる。一度できたところを繰り返し、繰り返し、その間に思い付いたら付け足していき、またそれを繰り返し、繰り返し、思い付いたら付け足していき、思い付かなかったら繰り返し、繰り返し――。そんな作業を繰り返しかんこんかんと下りていった。


呆れる程に長くなった童歌を一字一句間違えることなく覚えてしまうくらいに繰り返し、ようやく地上へと降り立った。降り立つとそこには溶けかけのアイスが。そうだ買い物帰りだったのに、冷やすのを忘れていた。溶けかけたアイスは放置していたせいでうっすら汚れが付着している。だが、ちょいちょいと汚れを払いかぶりつく。中は意外なことにまだ冷えていて、がぶりがぶりとむしゃぶりつく。汚れも全然気にならない。それよりも、飢えを渇きを体の熱を。
そう思ったところで目が覚める。超暑い。超喉渇いた。腹は別に減ってなかった。ま、飢えを、なんてのは覚醒する時に語呂的に足しとけ足しとけって足したもんだろう。いやらしいつまらなさが滲み出てる。とまあ、そんな夢だったわけなんだけど、普通に怖すぎてびびった。麦茶がぶ飲みし、寝ようかと思ったんだけど、熱は取れず、暇つぶしがてら、忘れないうちに書いてみた。寝よ、寝よ。明日早いのに。ていうか、寝てたのか。起きたけど。ま、熱も冷めたから、寝られるだろう。