エスカレーターで

前に乗ってるやたらと身長の高い女子高生の脚がなんだかモザイクがかって見えた。なんじゃこりゃ。変わった柄のタイツかなと思い、今日は珍しくメガネを持ち歩いていたので、近くに寄らなければ人の顔の判別がつかない壊滅的な裸眼から、多大なる目の負担と等価交換に得た一般人の視力へとチェンジ。前を見てみると変わった柄のタイツなんかじゃなく、びっしりと埋め尽くされたスネ毛だった。ファック。視線を上に向けてみるとウィッグつけてるおっさんだった。ガッデム。女装はいい。個人の自由だ。だがやるならスネ毛を剃れ!となんだそのびっしりスネ毛は。俺のより濃いじゃないか、とキレるもふと思う。これは女装ではなく、ただ女物の服が好きなだけなんじゃないだろうか。なるほど。それならソーリー。俺が悪かった。思う存分好きなだけ着倒してくれ。
そう。女物の服が好きなだけなら尊重してあげたい。あげたいのだけれど、現在の社会で育ってしまった固定観念がそれを許さない。衣服の機能から言えば男物だろうと女物だろうと違いはないだろうなんて抜かしたところで、どこぞのアニメに出てくるように、シュワルツネッガーみたいなおっさんがセーラー服を着ていたら滑稽さに笑ってしまう。機能から言えば別におかしなところはない。ただ女物の服を着ているだけなのに。そこで固定観念の重みを知る。ギャップで笑ってしまう程に記号的価値によっていることを。
だから奇異に思ってしまいながらも、尊重したいので、普通の人がそこにいるように、普通に振る舞う。ぶっちゃけ見て見ぬ振りする人と変わらないのだけど。自分は途中で降りたが彼はそのまま上のフロアへと向かっていた。上にあるのは婦人服コーナー。頑張れ。エールを送り便所へと向かった。全部の階に便所くらい作っておけよー。