バスの車中で聞こえた会話

「――だからさ、大変なわけよ障害児を持つお母さんも。その子は我慢が利かない病気なんだけど、婆ちゃんや周りの人からあんたの育て方が悪いんだがん、みたいに言われるもんでさ」
「あはは。それ中学の時の俺と同じじゃないっすか。キレたらわけわかんなくなるって。でもキレるにもちゃんと理由あるんっすよ」
「へえ」
「あはは。だって理由なくキレたらバカみたいに思われるじゃないっすか。あはは。俺の場合は3つっすね。親をバカにされた時と、ツレをバカにされた時と。まー、それくらいっすね、あはははは」

3つ目は!?多分聞こえてた人はみんな心の中でツッコんだ。自分は軽く吹き出した顔を咳きしてる振りで誤魔化してた。ベタ中のベタではあるけど、日常会話でナチュラルに織り込まれてるのが新鮮だった。バカみたいに思われるじゃないっすか、って前振りのすぐ後にそれかよっつー。声もサバンナの高橋みたいで、あははあははと始終へらへらと、先輩っぽい人と噛み合ってない会話を延々しているとこが何ともまた。