侍魂だっけ。犬を鎖につなごうと思ったら逃げ出して、どこ行くのかと追いかけたら家の裏庭で目を輝かせてる。こいつはいつも家の入り口にある犬小屋で鎖につながれるからどうしても、勝手に逃げたら怒られるってわかってるのにもかかわらず、今まで見たことのない家の裏側を見るために走り出したんだろう。怒られるのがわかってるから、申し訳なさそうに戻ってきた犬を鎖につなぎながら、そういえばこいつにとっての世界は家の近所一周分しかないわけだよな云々。そんな話を、鎖につながれてるわけでもないのに、休みの日はいっつも同じルートを回ってんなといつもの道を自転車に乗りながら、ふと思い出す日曜の午後。
まあ、あの話の落ちもそんなカンジだった気がするけど。大事なのはそこじゃないしな。ずっと家にひきこもってるからといって、動物園の動物はニートできていいよなあっとは言えないように。外にでることが可能な状況でひきこもるのと、外にでることが不可能な状況でひきこもらされるのじゃ、やっぱりちがう。それと同じで、鎖につながれて近所から一生広がることのない地図の上で暮らすのと、世界旅行もできるけど面倒くさいからべつに近所だけでいいやと広がらない地図の上で暮らすのは、似ているようで全然ちがうんだから。