運命論ってのは悲観的というか虚無的というか、諦め主義的なイメージがあったんだけど、どっちかっていうとむしろポジティブで合理的な考えなんだろうなあ。
自分の力じゃどうにもならないことを運命であるとか神の御心であるとかいう括弧でくくる。操作できない変数を定数にするというか。門地や容姿や才能やらやらに限らず、マンガや何かでよくある、自分の努力がちょっと足りず救えなかった人間のことを悔やむ主人公みたいな場合にも、それは主人公ひとりの努力でどうにかできる変数じゃなく、いかんともしがたい、定数だよね、と。
そうすることで自分に何とかできること、自分の権内にあることに、集中して打ち込むことができるわけだから、どうにもならんこと、自分の権外のことを嘆いてリソースを費やすよりも、ずっといいよね、っつー。

浮世の俗事は全能の
神にまかせておくがよい。
世の俗人のたわごとに
心つかわず、耳かさず。
よくよく悟れ、なにごとも
思いどおりにならぬもの、
みんな王者の王者たる
アラーひとりの思召。

心楽しく、うきうきと、
あらゆる悩みをお忘れなさい。
賢者の心も常日ごろ、
嘆く涙にすり減らされる。
か弱い奴隷がくよくよと
悩んでみても詮はない。
悩みを捨てりゃ、いつまでも
未来永劫救われる。