バス

おばちゃんの異常なコミュニケーション力が際立つのはバスである。おばちゃんの隣におばちゃんが座れば、全く見ず知らずの人であるにもかかわらず、そこから世間話が始まる。どこから来たの?今日どこ行ってきたの?最近からだの調子がわるくてね。息子の嫁が気が利かなくてね。
今日。学生やらサラリーマン混み合うバスの中、座席の大半はおばちゃん。そこで当然のように世間話が始まる。今日は健康診断受けてきたのよ。やっぱり健康大事だもんねえ。そうよねえだから定期的に通ってるのよ。異常なかった?おかげさまで。あらよかったじゃない。でも動脈硬化は進行中だって。あははそれは仕方ないわよ。ふと周りを見渡すとぐったりとした顔のサラリーマンがけだるそうに立っていた。
てなカンジのことを書こうと思ってたんだけど、その後の会話がちょっと面白かったので、とりとめもなく落ちもなくただ書くことにした。昔はここらへん何もなかったのにねえ。そうよねえむかしどこそこまでおばあちゃんとリアカーで歩いていったけど建物なんてなかったのに。ここらへんはよく燃えたもんねえ。そうそう爆弾で。あたし学徒動員されてあそこの工場から必死に逃げたわ。音が鳴る爆弾は大丈夫だって言ったね。そう流れてく爆弾は遠くに落ちるからね。真上から落ちると死んじゃうもんね。もしかして昭和一桁世代?そうよ。前半?後半?あたしは前半。あたしは後半だから疎開してたのよね。あたしの年頃は疎開ってなかったな。あらもうこんなところ。あらここですか?そうなんですよ。それじゃお元気で。お互いにね。
声が若いから50か60くらいのおばちゃんかと思ってたら昭和一桁80オーバーだった。前半の流れとかぶっ飛ぶ。ていうか80過ぎて健康診断とかパネェな。他にも結構面白い話をしていた。あの頃は芋の葉っぱとかしか食べてなかったのに結構太ってたわよね。あれ不思議ねあんまり痩せぎすの子っていなかったわよね。ごはんをおかずにしてすいとん食べたりね。結構おいしかったわよね。おなか減ってたしね。とかとか。