濡れる

雨。バス停には6、7人。備え付けの屋根からはみ出した後ろの2人は傘をさしていた。
バス停の向かい。雨宿りしながらどうしたもんか考える。傘はない。バスがくるのは後2、3分。雨宿りしながらバスが来てから急いでいくか、濡れながらバスを待つか。雨宿りしてる場所からバス停にいくにはちょっと長めの信号がある。それに待ってる間に人がどんどん来て座れなくなるかもしれない。仕方ない。どうせ濡れても2、3分。傘をささずにバス停に並ぶことにした。
並んで1分。バスは来ない。雨は思ったよりも強く、濡れた髪から水が勢いよく顔をつたう。ま、しゃーない。ぼーっと前を向いてるとふと雨がやむ。ん?と思ってまわりを見ると、そこには人の良さそうなおじさんが、傘をすっとさしてくれていた。バスがくるまで、ね。あ、ありがとうございます。はにかみながら答えて、よく見てみると、自然に差し出されたその傘は、ちいさな折りたたみ傘だった。おじさんの肩が濡れている。自分も少し濡れている。バスがくるまでの1分間。自分とおじさんは少しずつ濡れながら待っていた。
おじさんの行動がイケメンすぎてマジ濡れた、っつーそーゆー話。やー、いいもんだね、本当、善意ってーのは。心があったかくなって、うれしくなる。しあわせのおすそわけ的なそんなカンジ。