矛盾

悔しいでも感じちゃうなんて言うと陳腐にも程があるけど、それでも理屈じゃ説明のつかない、矛盾した欲求というのは魅力的である。
例えば愛する人を陥れた男の言いなりになり馬鹿にしていた国の男共の前で罵られながら痴態を晒すことを強いられてるんだけどそどこかそれを受け入れてしまっている王女様だとか、どこぞの国を滅ぼすために戦争に来ていたのに突然裏切りそちらに荷担する男だとか、犯人を逮捕するために同僚と来ていたのに突然制服を脱いで犯人と共に暴れることを選んだ警官とか。
これは一体なんなのかなって考えてみたら、単純に、理屈で説明がつく安っぽさから逃れているからだろうなあってことに落ち着く。先の読める展開が退屈であるように、理屈で説明がついてしまう行動もまた退屈である。理屈ではわかっているんだけど、その理屈を裏切る強い何か。どう考えても得策ではなく、理屈から考えればおかしいのはわかってはいるんだけど、それでも抗いたく思ってしまう強い衝動。単純にそこらへんが魅力的なんだろうなあ。そう考えると最初の例は何だかちょっと違う気がしないでもないけど、ま、それはそれで。様々な感情に引き裂かれつつも、聡明で優しい想い人から、下衆で最低な主人公に惹かれていく所が、何だか魅力的に思えたもんで。