絵面

自分は薄手で暖かな手袋なんて持っておらず、100均で買った素材の安さを厚さでカバーする分厚い手袋を使っているので、会計の際などはあまりの厚さに指先の感覚なぞ皆無で、小銭を探すどころか財布を開けることすら往生するので、会計の際は右手の手袋だけ外してちゃっちゃかと会計を済ませる。
一昨日の夜のこと。寒い寒いとコンビニへ駆け寄り品物を選びレジへと向かった。356円でーす。手袋を外して財布を見る。300円はないけど56円はあるな。じゃ1000円札と56円で、っと寒さで震える手でいつものように会計を済ませたのだけど、その日は店員さんがいつもと違っていた。新人さんがよくやるお釣りを渡した手の下にもう片方の手を添えるあれ。なぜだかあれをやられた瞬間のその絵面。
厚手の防寒着にゆるゆるのネックウォーマーを一つ上の男ばりに上げている。しかし手袋だけはなぜか左手のみで、素手の右手は店員さんのお釣りを渡す手と下に添えられた手の間。この絵面がもうね。タッチ狙いのおっさんか、って思えて自己嫌悪。更に店員さんが新人さんならば、最初はああやってお釣りを渡すように教育されるらしいので、ああ新人さんやねんな、くらいで済むけれど、その店員さんは2年くらい前から見かける古参の長身メガネっ娘。今にも切れそうなか細い記憶の糸を手繰ってみると、一度もそんな渡し方をされたことはない。
とすると、普段は普通に平素に平常にお釣りをちゃりんと渡すだけではあるが、わざわざ右手の手袋のみを外してるってことは、こいつひょっとしてタッチ狙いか?あたしがそういう渡し方をしないとも知らずに。確かに女に縁遠そうな顔してら。普段ならただただちゃりんと落とすだけではあるが、この憐れきわまりない男に、右手の手袋だけを外し僅かな可能性に懸けている右手をぷるぷると振るわせ差し出している女に縁遠そうなこの男に、畏れ多くもこの私様が施しを授けてやろうではないか、700円のお釣りになりまーす、左手は添えるだけ、って渡したのだろうかだなんて考えるともう頭が沸騰しそう。違うんだ、決して狙ってのことじゃないんだ。
以下釈明が十行弱。なんてことを考えたりなかったり。何だか急激に温度差が、って感じもするが、上の段落は飯前で、この段落は飯後。超大盛ペヤングにチャーハン。腹いっぱい。だから。終わり。