公園にて

登場人物は4人。いや3人と1匹。犬。犬を連れた飼い主の爺ちゃん。そして幼女。アンド幼女。
爺ちゃんは紐を持っている。犬は爺ちゃんの前にいる。幼女Aは犬の腹をさすっている。ここまでは普通。何の変哲もない。平和な光景、日常オブ日常。でもこっからがおかしかった。幼女Bはブリッジのような姿勢で、つま先立ちをして腰を浮かせているんだけど、両手は逆手で肩の下から真っ直ぐ下に手をついているから、ブリッジとは違って顔は正面を向いていた。そして犬は前足を幼女Bのおなかの上に乗せて立っていて、幼女Bは犬と見つめ合いながらけらけらと笑っていた。幼女Aはその横で犬の下腹部あたりをせわしなくさすり、紐を持った爺ちゃんは「はは」と笑う。
その光景が異様に思えてしょうがなかった。え、獣姦物の撮影ですか、ってそんな生ぬるいもんじゃなく、獣姦が公園で行われるのが当たり前な、ごくごく日常的でありふれた健康的なスキンシップとされている世界に紛れ込んだような、そんな怖さ。その光景と「はは」と笑う爺ちゃんの声が不気味に思えてガン見してるとブリッジのような姿勢をして犬をカムインしている幼女Bと目があった。驚愕、途惑い、怒り、どれともつかないような目をされた。強いて言うならば嘲笑に近い諦めのような失望。この楽しい空間を侵犯する無遠慮な視線に対する、あーあ、空気読めよ、と言わんばかりの、とても幼女がするとは思えないその視線に耐えきれず、目を逸らしてそそくさと立ち去る。
いや、自転車だから、立ち去るも何もないんだけど。正確に言うならば、光景を見たのが3、4秒。幼女Bと目があったのが1秒ちょっと。そしてそのままフェードアウト。なのにこんなにも印象的なあの風景。あの視線。そんな話。犬。爺ちゃん。そして幼女。アンド幼女。