電車に乗ってたら知らないおじさんに肩を叩かれた。え?と思いよく見るとおじさんの手には見慣れた携帯。どうやらイスに座ってたときにポケットから落ちていたらしい。お礼を言い、電車から降りて、携帯をいじる。いつもと同じように、当たり前のように携帯をいじりながら、もしかしたら携帯を忘れてあわてふためいてた未来もあったのかと、なんだか不思議な気持ちがした。
でもそんなものかもしれないな。たまたまじゃなく、それがデフォ。以前、生と死を、目隠しをしてガケに向かって歩くようなもの、なんつってた人がいたけど、あれ風に言うならばガケじゃなく、落とし穴がそこらに仕掛けてある普通の道。10cmくらいの小さな不運の穴から、地獄まで一直線の深すぎる穴まで。そこを普通に歩く。基本的には落とし穴はほとんどないんだけど、どこにでも同じように、そこにある。見えないだけで、一歩踏み出した足の隣にあったり、その穴の隣を歩いてればいつも通りの平穏だったり。
運悪く不幸な出来事が降ってくるんじゃなく、1が出たら死亡、2から10が出たら重傷、10から50が出たらアンラッキーみたいな千面ダイスを常に振ってるようなもんだろうなと。毎回電車に乗るごとに、携帯なくす抽選が行われていて、今日はたまたま運悪かったように思えるけど、そんなことはなく、半ば必然、毎回振ってた千面ダイスのうちの49の目が出たから今日は、的な、ね。
ま、しかし。おじさんどうもありがとう。黒服の優しいおじさん。や、ダークスーツだったけど。おかげで今日もいつも通りに安穏と過ごせております。感謝。