無限、永遠、あるいは黒タイツ 

バスの中で黒タイツの闇に飲み込まれそうになった。最初はただの黒タイツだった。最近の女子高生がはいてる黒いあれ。近頃よう見るなあってなんとなく見てたら段々と焦点がぼやけ黒タイツが墨のようにじわりじわりとまわりを浸食しはじめた。闇は少しずつその黒さを増し見たことのない深さとなってどんどんと焦点がぼやけ、いや、焦点が合いすぎたのか、あまりの黒さに気持ちが悪くなりはじめた。目を離すことなどできず、ガンガンする頭を押さえながら、どこまでも深い闇にのめり込んでいくとそこに宇宙があった。無限、永遠、あるいは黒タイツ。
何を大げさな。そう思われるだろうけど、根拠はある。何もない黒に飲み込まれた後、バスは目的地に着き、自分は降りた。さっきの体験はなんだったんだろう。そのときはまだ宇宙という意識はなかった。不思議な体験にとまどっていただけだった。今まであんなに黒い黒は見たことがなかったから。疲れているんだろう。週末だし。今日いちにち頑張ればいいんだ。そう、気分も新たに歩いていると生足の女子高生を見た。光るように白い女子高生の生足を。そのときわかったのだ。ああ、さっきの黒タイツは宇宙で、この光るような生足はビックバンだって。